Interview

てがみ屋さま インタビュー

作り手一人ひとりの個性が感じられる
「ならでは」のレターセットが実現しました


てがみ屋 山下みつよ

長崎市大浦町に店を構える小さな文房具店〈てがみ屋〉の店主。お店には思わず手に取りたくなるキュートでオシャレなアイテムが充実。また長崎で活動する作家が手がけた、オリジナルのアイテムも販売している。
[HP]https://www.nagasaki-tegamiya.com
[依頼デザイン]レターセット(デザイン・編集)、店舗リニューアルチラシ


長崎らしい観光名所が描かれたレターセット「長崎レタートリップ」は、てがみ屋の看板オリジナル商品。山下さんが発案したそうですね。

山下:
はい。2017年6月に店舗をリニューアルするにあたって、なにか〈てがみ屋〉ならではの新商品を作りたいと思ったんです。長崎の観光名所を題材にしたレターセットというアイデアは持っていたで、以前から知り合いだった圭太さんに相談しました。私はできれば5種類、それぞれ別のデザイナーさんやイラストレーターさんに担当してほしかったので、デザインだけではなく作り手の紹介や取りまとめなどの企画・編集もお願いしたんです。

中村:
僕の他に、メンバーとして知り合いから4名を推薦することはできましたが、お話をいただいたのがその年の4月上旬で、リニューアルまでの期間が限られていました。その中で、はたして他の方たちが依頼を受けてくれるかどうか…そこが心配でした。でも企画趣旨を説明すると、皆さん快く承諾してくれて。これは、発起人であり一緒に説明してくださった山下さんのお人柄も大きな要因だと思います。
長崎のデザイナー・イラストレーターが手がける、長崎ならではのレターセット。仕事としてのスケジュールや金額的な話は置いておいて、実現したら面白そうだよねってみんな思っていました。やっぱり“紙モノ”は好きだし、創作意欲が高まったのかなと。僕自身も、こんな作り手同士がコラボする機会は滅多にないですし、ワクワクしていました。

山下:
予算も限られているなかで皆さん承諾してくださったのは、圭太さんのおかげです。声かけの後に、メンバーで集まって一度飲みに行ったんですよね。そこで一人ひとりのポートフォリオも見せてもらったんですけど、本当にどれも個性が溢れていて。こんなに違うんだとびっくりしました。


レターセットの制作過程についても教えてください。

山下:
最初に規定サイズや基本情報、5ヶ所の観光名所の題材だけお願いして、あとは本当にお任せでした。本職の方のデザインに関して色々言いたくないし、細かなテイストなど自由に制作していただきました。
それで完成したレターセットのクオリティが素晴らしくて、デザインやイラストを受け取るたびに「すごい!」と興奮していました(笑)。一つひとつが丁寧に考えられていて、しかも作り手ごとに色もテイストも全くバラバラの5種類が出来上がったんです。

中村:
制作期間としては1ヶ月ちょっとで、他のデザイナー・イラストレーターへの声かけや調整と合わせると2ヶ月くらい。僕は世界遺産の一つにもなった、三菱長崎造船所のジャイアント・カンチレバークレーンを題材としました。特徴的なミントグリーンは結構難しい色でしたが、せっかくなら心がときめくレターセットにしたかったので。淡い夜空を照らすサーチライトや花火で、ちょっとバブリーで賑やかな雰囲気にしました。

山下:
それと今回、店舗のリニューアルに合わせたチラシも同時並行でお願いしました。こちらもレターセットと同様、必要な告知情報だけ伝えて、あとはお任せ。それとレタートリップの商品ロゴも圭太さんに頼みました。

中村:
レターセット自体にそれぞれの作り手の個性が出ているので、ロゴはあくまでシンプルに。可愛らしさとか、手紙ならではのあたたかな手触り感が伝わるようにデザインしました。


実際に完成したレターセットの反響はいかがでしたか。

山下:
観光客の方々はもちろん、長崎で暮らしているお客さまにも「県外に向けた手紙で使いたい」と好評です。それに私自身、手紙を書くのが大好きなので、自分用としても嬉しいし気に入っています。以前、秋田で暮らす方への手紙にこのレタートリップを使ったんですけど「秋田版のレタートリップがあれば、それを送りたかった」という返事が来たんです。発売からもう3年近く経っても、いまだにお店の看板商品の一つ。息の長い商品になったのも嬉しいです。

中村:
売れるから作るとか、商品としての必要性だけではなく、そもそも楽しんで作りたいというみんなの気持ちがあったからこそ、いい商品が完成したんだと思います。ちょっと部活みたいな雰囲気もありましたよね。


山下:
それと今回の制作は、圭太さんが全体の進行をうまくまとめてくださったんですよ。参加した5名のデザイナー・イラストレーターと私で、グループチャットを使って制作状況や困ったことを共有していたんです。そこでの圭太さんのあだ名が、一番年下なのに「お父さん」(笑)。意思疎通や進行がスムーズにいったのは、お父さんさまさまですよ。

中村:
こちらこそ、いい機会をいただけて有り難いです。作り手としては、こういう題材を仕事でできるのはとても嬉しいんですよ。そもそも自分のイラストを描きたい、デザインしたいという衝動があって仕事にし始めた方ばかりなので、僕含めて、みんな関わることができて本望だったんじゃないですかね。お互いのノウハウや工夫を見て、学ぶ機会にもなりますし。また今後も、このメンバーでなにかできたらいいなと思っています。

取材:藤本編集局