Interview

ながさきプレスさま インタビュー

長崎らしさ、タウン誌らしさを表現したロゴは
幅広い読者に向けた雑誌の指針のような存在です


ながさきプレス 編集部 中島悠希子 大橋竜也

1988年創刊のタウン情報誌「ながさきプレス」は、グルメ・生活情報・レジャーなど幅広い情報を伝える雑誌。毎月25日発行で、別冊本やHPも手がけている。編集部は誌面の企画から編集・取材・撮影・デザイン発注を担当。表紙デザインにも携わる。
[HP]https://www.nagasaki-press.com
[依頼デザイン]雑誌ロゴリニューアル
(取材には中村さんの息子さんも同席)


雑誌の“顔”とも言えるロゴのリニューアルは、そもそもどのような理由があったのでしょうか。

中島:
長崎県のタウン情報誌「ながさきプレス」は創刊から30年以上経ちますが、これまでも時代に合わせてロゴの変更を行ってきました。初期の頃はひらがなとカタカタの丸みを帯びたデザインでしたが、今回のリニューアル前は、英字をアレンジした洗練されたデザインでした。このロゴは2013年4月号から登場しましたが、当時はフリーペーパーも含めて紙媒体の競合が多く、差別化が必要でした。そこで媒体自体も30~40代の女性や若者をメインターゲットに、いい意味でタウン誌らしくないオシャレな誌面を展開していたんです。
しかし時代が変わって、より幅広い読者に向けて情報を発信していくことが求められるようになりました。そうした中で、誰にでも親しみやすく、初めて見た人でも「これは長崎県のタウン情報誌だ」と伝わるようなロゴにリニューアルすることになりました。

大橋:
新しいロゴデザインは、普段から誌面制作でお付き合いのあるデザイナーの方々に呼びかけて公募しました。時期としては、2018年1月頃。2018年4月号からのリニューアルを目指していました。募集に関して、細かなテイストや色はある程度自由でしたが、今回はひらがなとカタカナの「ながさきプレス」という表記であること、また幅広い読者が親しめるものというリクエストはさせていただきました。


中村:
最初にお話をいただいた時は、正直選ばれるのは厳しいかなと思っていたんですよ。他に呼びかけていると考えたデザイナーも実力のある方々ばかりですし。それでもとりあえず形にはしようと手を動かしていると、どんどん気持ちがのってきて(笑)2・3案出そうと思っていたら、バリエーションも増えていって結果的に5・6案提出することになり、やりきった感もありましたね。
ロゴやブランディングは以前から力を入れていて、今回特に重視したのは、長崎のアイデンティティが刻まれるようなデザインです。欧米の様々な文化がいち早く入ってきた歴史から、異国感のある書体をベースに選択しました。個性の強い地域なのでデザインのヒントが多くて、どれを取り入れるのか逆に悩みましたね。

実際に新しいロゴを選ぶ過程は、どのようなものだったのでしょうか。

中島:
デザイナーの方々から集まった案と、社内デザイナーが作成した案も含めて、一旦すべて無記名で張り出して全社員で投票しました。そこからある程度絞り込み、社内会議で検討した上で中村さんのデザインしたロゴに決定しました。

大橋:
ロゴ単体で見た印象と、実際の表紙として置いた印象が結構違ったので、選ぶ方も楽しかったですね。一見どうかなと思ったデザインも、文字や写真と並べてみるとしっくりきたりして。自分が選ぶ際も、そういった誌面に置いたイメージは重視しました。その結果投票したのが中村さんのデザインだったんですけど。


中島:
私も、最初の方から中村さんのロゴがいいなと感じていました。今回デザインだけではなくコンセプトの解説も合わせてお願いしたんですけど、すごく納得できる内容だったんです。様々な文化に触れてきた長崎ならではの特徴を捉えた上で、タウン情報誌という媒体の役割まで考えてあって。私自身、改めてそれを思い起こされたというか、やっぱりそうだよねと、グッとくるコンセプトでした。
読みやすいとか、分かりやすいというのはデザインを見れば理解できるので、その上でどれだけデザイナーのロジックが含まれているのか。中村さんのデザインしたロゴは、実際の出来上がりにもきちんそれが表れていると思います。


ロゴのリニューアルに対する反応はいかがですか。

中島:
雑誌の販売数としても良い傾向ですし、書店で並んでいるのを見ても、以前よりタウン誌らしさが感じられます。これなら、おくんちやランタンフェスティバルなどのイベントに合わせて長崎を訪れた人にも、すぐに内容が伝わると思います。
雑誌のサイズが小さいものからA4に戻ったり、誌面の文字サイズも少し大きくしたり、中身の部分でも読みやすい工夫を重ねています。巻頭特集もグルメ系だけではなく、レジャーやお出かけもバランス良く入れて、これまでなかった健康に関するコーナーも加えたり。ロゴだけではなく雑誌全体で、幅広い読者に向けた形に進化しています。

中村:
雑誌のロゴデザインはデザイナーとしての表舞台です。僕としても、今回新しいロゴに関われたのは嬉しくて。デザイナーとして独立したのは、先ほどの話で「ながさきプレス」がターゲットを絞っていた頃です。まさに長崎の情報の代表というか、こういうオシャレでしっかりした情報誌が長崎から毎月発行されるのはすごいなと当時からリスペクトしていたので、自分のデザインが選ばれたのは光栄です。それに実績としても、長崎県民のほとんどの人は「ながさきプレス」を知っていますから。ロゴを担当したと話すと、すぐに分かってもらえます(笑)。


今後の「ながさきプレス」の方向性やデザインについて、どのようにお考えですか。

中島:
雑誌しか情報を得る手段がないという時代ではないので、いかにして読者に必要とされるタウン誌であり続けるのか、今も模索しています。そうした中で、やはり情報を絞りすぎないことは大切だと思います。自分とは関係ない、私には合わない雑誌だと、長崎で暮らす人たちに思ってほしくないんです。なので幅広い読者に受け入れられる情報を載せていこうと。もちろん、デザインの方向性も同じです。それぞれのページに個性はあっても、雑誌全体としては誰でも親しめるものになるよう、私たちも日々努力していきます。

中村:
やっぱり30年の歴史とコンテンツ量は強みですよね。書店に並んでいると安心する、長崎に根付いたタウン誌だと思います。そんな媒体のロゴのリニューアルに携わることができて、今後に繋がる大きな経験になりました。

取材:藤本編集局