Interview

正解を導き出すのではなく 進むべき道を照らしだすデザイン

新しく生まれ変わったウェブサイトでは、クライアントへのインタビュー記事を掲載するようにしています。この企画を思いついた時、いろんなクライアントさんを思い浮かべましたが、取材する自分自身が自己をよく理解できていないのではないかと思いました。
そこでお仕事やイベントにてご一緒させていただいている藤本編集局の藤本明宏さんにインタビューしてもらい、仕事に対するスタンスや考え方をまとめていただきました。プロの第三者に考えをまとめていただけると「流石だなぁ〜」と読み入ってしまいました。今後、自身を語る上でのよき指針になりそうです。(中村)

(以下、藤本さん)
 グラフィックデザインから広告チラシ、名刺、ロゴデザイン、商品パッケージなど、とにかく幅広いジャンルに携わるデザイナー・中村圭太さん。ジャンルの壁を軽々と飛び越えるフットワークの軽さは、素直な好奇心がもとになっている。「なにか面白いことをやっている人ともっと仲良くなりたくて。デザインのお仕事をいただいた相手にも、仕事相手としてではなく、一ファンとして力になりたいんです」。リアルな空気感を肌で感じるために、空いた時間には地域のイベントや気になるスポットへと積極的に足を運び、そこでの繋がりから発想のヒントを得ることもあるそう。デザインだけではなく、ブランディングやプロモーションの分野で力を発揮するのも、そんな好奇心があればこそ。さらにノウハウを身につけるため、各種団体にも参加して情報収集を行なっている。目標は、デザインという枠にとらわれず、幅広いアプローチで依頼主をバックアップすること。「試合に合わせてアドバイスする、ボクシングのセコンドみたいな存在ですかね」という言葉通りの頼もしさだ。
 そのデザインに対する前向きな姿勢は、地域を盛り上げるデザイン活動にも表れている。地域のイベントや店舗に関わるデザインに携わる際には、そこで生活したり働いている人たちと直接会って、交流を深めながらデザインのヒントを得てきた。ありきたりな情報を器用にまとめるのではなく、手間を惜しまず足を使って得た感覚や情報を形にしていく。そんな地道な取り組み方の中でいつも大事にしているのが、そのデザインの“核”となるテーマだ。オシャレで目を引く一過性のデザインではなく、きちんと依頼主の目的を達成するために考え抜いたデザイン。そこに込めた想いに自信があるからこそ、単に完成品を渡すのではなく、丁寧にデザインの想いや意図を言葉で伝えている。「きちんとした形で伝えないと、人には伝わらないと思うんです」と中村さん。完成したものをどうやって伝えていくのか、そんな深い部分まで考えていることが、的確かつやさしく寄り添うデザインから伝わってくる。
 関わる領域も幅広く精力的に活動しているが、生活の軸となるのは、あくまで自分の家族との時間だそう。仕事が忙しくなっても、妻や子どもと一緒に過ごす時間を常に大切にしている。「一生活者としての、背伸びしない目線を持ち続けたい」という言葉にも、等身大で仕事と向き合う誠実さが表れているように感じた。今後については「自分がデザインで関わった場所の明かりがあたたかく灯っていって、その明かりが少しずつ増えていけば嬉しいんです」と笑顔。これからも依頼主と同じ方向を見ながら一緒に悩んで、考え抜いたデザインとアイデアで道を照らしだす。