背景に映るもの
以前より使用していたプロフィール写真。自宅件事務所のマンションの一室にて背景が真っ白の部屋に簡易スタジを設け、一人でリモートのスイッチを使いながら撮影したもの。初見の方々に何度も「プロフィール写真とお会いした印象が違う」と言われてきました。つまり評判がよくなかったわけです。裏方の商売だと思ってますので、自身をあらわにしたものが恥ずかしく、ピンボケのブレた写真を使っていました。
度重なる写真へのご指摘とビジネス上「好感の与えるものを使ったほうがいい」というアドバイスもあり、撮り直すことにました。ただ撮り直すにしても面白みを感じなかったので、どうしようかと考えあぐねていた時に、ある本の一文に「他者からの信用を得るには、自身のバックグラウンドを開示するとより親密になれる」というものを見つけました。
そこで私自身の背景(バックボーン)を感じられる写真を意識して撮影することにしました。撮影された写真には、三菱造船所が背景に見えます。紅白の重機は鶴の港らしいランドマークですね。長崎の人には馴染みのある風景です。
なぜ三菱造船所を背景に選んだかというと、祖父が三菱の従業員として設計などに携わり、父は三菱の関連会社にて船の電気技師をしていました。私はそういった技術職の家系で育てられてきています。そして父の教えは「手に職を」。私はグラフィックデザイナー、下の妹達は管理栄養士と保育士の資格を持っていて兄妹皆、父の教えを体現しました。(私は一時、父の関連会社に入社を勧められましたが、理数系がとても弱かったためグラフィックの方に進んでいます。)
撮影場所は三菱の工場が見渡せて、不要なものが写り込まないグラバー園下の有料駐車場。今回も一人でリモートのスイッチを持ち、画角のなかに自身と工場が適性の位置に映るよう、やや背伸びして撮影しています。(通行人の人からするとさぞ不自然だったでしょう…)
父や祖父が仕事の時に着ていた三菱の青い制服は、もちろん持ち合わせてはいないので、それに近い青いシャツで撮影しました。祖父も父もいかにも職人らしく、人付き合いが上手ではなかったのですが、頑固で、こだわりを持って働いているように見えました。そういった職人らしい性格は受け継いでいるようで、時に失敗し血筋を感じる時が多々ありますが、物作りや仕事の取り組みにおける精神を青シャツを着たことで多少なりとも近づけたなら嬉しい限りです。